CAPMモデルとは、資本資産価格付けモデルであり、市場ポートフォリオと無リスク資産の関係から個別資産の期待収益率を算定する枠組みである。
概要

市場における投資家は、リスクと報酬とのトレードオフを重視してポートフォリオを構築する。CAPMモデルは、この原理を数式化し、個別株や債券の期待収益率を「無リスク利子率+β×市場プレミアム」で表現したものだ。
モデルの根底にあるのは、効率的市場仮説と投資家が合理的に行動するという前提であり、これらから導かれる市場ポートフォリオの概念が中心となる。CAPMは20世紀初頭に形成され、以降金融工学や企業財務の基礎理論として確立した。
役割と機能

- 資産評価:株式の期待収益率を算出し、PER・PBRなどの指標との比較に利用。
- コストオブエクイティ:企業が新規発行する株式やプロジェクトへの投資判断で用いられる割引率として採用。
- ポートフォリオ最適化:市場全体のリスクと個別銘柄のβを基に、効率的フロンティア上の構成比を決定。
- M&A評価:買収候補企業の株価水準やシナジー効果を測る際にベータ値を参照し、投資リスクを定量化。
- 規制・ガイドライン:金融機関が内部統制や資本要件を算定する際にCAPMベースのコストオブエクイティを前提とするケースが多い。
特徴

| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 線形リスクプレミアム | 期待収益率はβ(市場ポートフォリオに対する感応度)と無リスク利子率の線形関数で表される。 |
| 市場ポートフォリオへの依存 | 理論上、全資産が含まれた市場ポートフォリオを想定し、そのβ値のみで個別株評価を行う。 |
| 単一因子モデル | システム的リスクの1つ(市場リスク)のみを考慮し、特有リスクは分散できると仮定。 |
| 簡潔さと汎用性 | 直感的に理解しやすく、多様な金融商品への適用が可能であるため教育・実務両面で広く採用されている。 |
CAPMは多因子モデル(Fama–French三因子、Carhart四因子など)と比べてパラメータが少なく計算が容易だが、現実の市場ではβだけでは説明できないリスク要素が存在する点が批判される。
現在の位置づけ

CAPMは依然として金融教育や投資銀行業務において「基礎モデル」として不可欠である。特に、企業価値評価(DCF法)や資本コスト算定では、CAPMベースの割引率が標準的な入力となる。また、規制機関は金融システム全体の安定性を測るために、CAPMに基づくリスクパラメータを監督指標として活用することもある。
一方で、実証研究では市場プレミアムやβの推定が不安定である点、税金・取引コストの無視といった仮定が現実に合わないケースが多く、近年はマルチファクターモデルへの移行や代替リスク測度(VaR・CVaR)の採用が進む。
それでもCAPMは「市場リスクを単純化して捉える」手段として、金融工学の基礎理論と実務ツールの橋渡し役を果たし続けている。
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