デフレーション・ターゲット制

デフレーション・ターゲット制とは、中央銀行が物価下落率を一定の負の目標値に設定し、その目標を維持することを目的とした金融政策枠組みである。

目次

概要

概要(デフレーション・ターゲット制)の図解

デフレーション・ターゲット制は、インフレーション・ターゲット制の逆概念として提唱された。物価指数が下落し続けるデフレーションは、消費・投資の先行き不透明感を高め、実質利子率を引き上げることで経済活動を抑制するリスクがある。したがって、デフレーションを一定の負の水準に抑えることで、経済の安定化を図ろうとする試みである。主に長期にわたるデフレーション圧力が懸念される経済環境、例えばデフレーション期に入った先進国の金融政策議論の中で理論的に検討されることが多い。実際にデフレーション・ターゲット制を採用した事例は極めて稀で、概念的な枠組みとして議論されることが主流である。

役割と機能

役割と機能(デフレーション・ターゲット制)の図解

デフレーション・ターゲット制の主な役割は、物価下落率を予測可能な範囲に収め、期待インフレーションを安定させることで実質利子率の不確実性を低減することである。中央銀行は政策金利の設定、公開市場操作、資産購入プログラム(QE)などの手段を用いて、デフレーション率を目標値に近づけるように市場にシグナルを送る。例えば、政策金利を極端に低く設定し、金融市場に流動性を供給することで、企業や消費者の借入コストを抑え、需要を刺激する。さらに、デフレーション率の目標を公表することで、企業や個人の期待インフレーションを低め、デフレーションの自立的拡大を抑制する役割も果たす。

特徴

特徴(デフレーション・ターゲット制)の図解

  • 負の目標値設定
    インフレーション・ターゲット制が正の目標を設定するのに対し、デフレーション・ターゲット制は負の値を設定する。これにより、物価下落率が目標を上回る(より大きなデフレーション)場合に政策の強化が必要となる。

  • デフレーションスパイラルへの対抗策
    デフレーションが進行すると実質利子率が上昇し、消費・投資が減少するデフレーションスパイラルを防ぐため、中央銀行は積極的に市場に資金を供給する。

  • 非伝統的金融政策の必要性
    物価下落率を制御するためには、政策金利がゼロ近辺に達した場合でも、資産購入やマイナス金利政策などの非伝統的手段を併用する必要がある。

  • 期待管理の重要性
    デフレーションの目標を公表することで、企業や消費者の期待インフレーションを低減させ、デフレーションの拡大を抑える。期待が安定しないと、デフレーションが自己強化的に進む恐れがある。

現在の位置づけ

現在の位置づけ(デフレーション・ターゲット制)の図解

デフレーション・ターゲット制は、実際に採用された事例はほぼ存在しない。主に理論的議論の対象として、デフレーションが長期化する経済(例:日本の長期デフレーション期)や、金融政策の限界を検討する際に用いられる。実務上は、中央銀行はインフレーション・ターゲット制を採用しつつ、デフレーションリスクを抑制するためにゼロ金利政策や量的緩和を実施している。近年の金融市場の変動や金融危機後の政策対応を通じて、デフレーション・ターゲット制の概念は、デフレーションリスクを定量的に測定し、政策の適切なタイミングを判断するための指標として注目されつつある。

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